2020/02/20 出向命令の適法性

労働契約法

(出向)

第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

 

★「出向」とは

:現在の使用者との労働契約関係を存続させたまま、他の使用者の業務に従事すること

→労働者に対する労働給付請求権を、出向先に譲渡するもの。

 ∴労働者の承諾が必要となる。

 

cf 転籍:現在の使用者との労働契約関係を終了させ、他の使用者企業との間で労働契約関係を成立させてそこでの業務に従事すること 

 

★ 労働者の「承諾」とは 

個別的な合意はもちろん、就業規則等による事前の包括的承諾でもたりる。

ただし、包括的承諾には別途要件あり

 

★事前の包括的承諾について

出向命令が適法となるには

① 出向の根拠規定がある場合

② 当該命令が、必要性、選定の妥当性等に照らして権利の濫用ではないといえる場合

の2要件を満たす必要がある(上記条文)。

 

・① 根拠規定について

 出向について個別の同意がある場合はもちろん、就業規則労働協約に規定がある場合も含まれる。

※ リーディングケースである事件(最判H15.4.18 新日本製鐵事件)は、就業規則および労働協約の双方がある場合。とはいえ、根拠の有無に限るのであれば、就業規則で足りるだろう。労働協約まであればより手厚くて良いけど。②C手続の妥当性との関係?

 

・② 権利濫用の有無について

具体的には

A 業務上の必要性

B 不当な動機・目的の有無

C 労働者の被る不利益の大きさや手続の妥当性

が主な考慮要素となる。

 

<事例>

Aについて

出向無効

1)仕事上のミスをした労働者をその制裁措置として退職するであろうとの見込みの元で遠隔地に出向させたもの

 

Bについて

1)管理職としての適性を欠く労働者を出向という手段を利用して職場から放逐しようとした事案

2)退職勧奨に応じない職員を退職に追い込もうとして出向を命じた事案

3)退職勧奨を拒否した労働者らが自主退職に踏み切ることを期待して身体的・精神的負担が大きい業務に出向させた事案

4)内部告発をした労働者を懲戒目的で子会社に出向させたと判断された事案

 

Cについて

1)障害者の両親と同居しその面倒をみていた労働者を遠隔地に出向させようとした事案

2)腰痛等の持病をもつ労働者にとって、出向先の労働条件が肉体的・生理的に負担が大きく退職に追い込まれるおそれがある事案

 

 

結局はバランシングか。

必要性はあるが不利益もあるという場合は、手当をつける等で調整?

ちなみに前記新日本製鉄事件は、所属する労組とも協議し、一定の条件をのんでもいる。経営上の必要性もあり、相当手厚いと思われる。

むしろ、出向が長期化(複数回の延長)したことへの不満がメインか?

出向の長期化について、実質は転籍である(=より要件が厳しい)との主張もなされているが、認められていない。