自転車の損害(事故)

自転車の損害について

 

 

京都地裁H27.7.29

  3 争点(3)(原告の損害)について
  (1) 原告自転車の修理費用 42万4080円
 本件事故による原告自転車の修理費用が本件事故当時の本件自転車の時価を下回るときは,修理費用を本件事故と相当因果関係のある損害ということができるものの,本件事故当時の時価が修理費用を下回るときは,経済的全損にあたり,本件事故との相当因果関係のある損害は時価の限度とみるべきである。
 これを本件についてみると,証拠(甲5,甲14の1ないし6,甲15の1・2,甲17)によれば,原告自転車は,本件事故によりカーボンフレーム等が損傷し,その修理費用として66万0588円を要することが認められる。この点,被告は,カーボンフレームの損傷は認められないと主張するが,本件事故による衝撃は小さくないものと窺われること,カーボンフレームは外観から破損の兆候を確認しづらい特性を有していること,販売店がフレームの交換を必要と判断していること,簡易な修理でスポーツバイクとしての原告自転車の使途に耐えるには疑問があることに鑑みれば,上記被告の主張は採用できない。
 そして,証拠(甲10の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,原告自転車は,平成24年5,6月に約58万9000円で購入したものであることが認められ,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故当時の時価は,適当な中古自転車市場が見当たらないため,減価償却の方法により算定するほかなく,原告自転車がスポーツバイクであり,負荷のかかる使用が予定されている一方,用途に応じた耐久性を備えていることに鑑みれば,耐用年数を5年とみて減価償却した42万4080円(58万9000円-(58万9000円×0.14×2年))とみるのが相当である。
 以上によれば,原告自転車の修理費用が時価を上回るため,本件事故と相当因果関係のある損害は,上記時価の限度とみるべきである。
  (2) 身の回り品の買換費用 4万0227円
 証拠(甲16の1ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故により,原告の身の回り品(半袖ジャージ,ヘルメット,グローブ,シューズ)が損傷したことが認められる。
 原告は,これらの買換費用を損害として主張するが,身の回り品についても,本件事故と相当因果関係のある損害は,本件事故時の時価の限度というべきである。
 そして,証拠(甲6,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,ジャージとヘルメットは平成26年に購入し,グローブは2,3年前に購入し,シューズは4,5年前に購入したものであることが認められ,購入金額は買換費用と同等と推定し,ジャージの耐用年数は4年,ヘルメット,グローブ及びシューズの耐用年数はいずれも5年として,減価償却の方法により本件事故当時の時価を算定するのが相当であり,その結果は次のとおりとなる。
   ① ジャージ 1万3230円
 (1万4700円-(1万4700円×0.20×0.5年))
   ② ヘルメット 2万1390円
 (2万3000円-(2万3000円×0.14×0.5年))
   ③ グローブ 1827円
 (3150円-(3150円×0.14×3年))
   ④ シューズ 3780円
 (1万2600円×30%(5年経過,最終減価率))
   ⑤ 合計 4万0227円
  (3) 過失相殺後の残額 41万7876円
 前記認定のとおり,本件事故に対する過失割合は,原告につき10%,Bにつき90%であるところ,被告が負担すべき原告の損害額は,次のとおり,上記(1)及び(2)の損害額から原告の過失割合を控除した残額(ただし,1円未満切捨て)となる。
 (計算式)(42万4080円+4万0227円)×(100-10)%≒41万7876円