相続放棄

R040927加筆

 

★ 放棄

 

(書式類 裁判所HP

www.courts.go.jp

 

●放棄可能な期間(熟慮期間)

相続開始を知ったときから3か月以内(民法915条1項)
例外的に、請求により家裁で伸長可能。

 (相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

 

・「知った時」
相続開始の原因たる事実の発生を知っただけでは足りず、それによって自己が相続人となったことを覚知した時(大決T15.8.3)。
例外的に、承認・放棄をしなかったのが、a) 被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、b) 諸般の状況から見て、相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があり、c) そのように信じるについて相当な理由があると認められるときにおいては、熟慮期間は相続人が財産の全部または一部の存在を認識したとき/通常これを認識できるときから起算(最判S59.4.27)。
=(相続人であることの認識と、相続人として相続する財産の内容を認識しているか否かとは別次元であることを前提)

 

 

●再転相続の場合

例)甲が死亡し、乙が相続人になった(第一次相続)。しかし乙が承認・放棄等しないまま死亡し、丙がその相続人となった(第二次相続)。

 

・選択権

丙は、第一次相続、第二次相続それぞれについて、承認・放棄の選択権がある。

 

・熟慮期間

丙が、自らが相続人となったことを知ったとき(同916条) 

第九百十六条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

※ 再転相続における「知った時」

第二次相続により相続人となったことは認識していても、第一次相続について認識していない場合、第一次相続に関する熟慮期間は、それを知った時から進行する(最判R1.8.9)。

∵ 第一次相続について相続人となったことを知らなければ、それにつき財産調査および承認・放棄の判断を強いることはできない。

 

●放棄の撤回は不可(919条1項)

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

代襲相続はしない

はじめから相続人とならなかったものとなるため、その子らへの代襲もない。

 

(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

(放棄に関連して)

★法定単純承認

相続財産の全部または一部を「処分」したとき、単純承認をしたものとみなされる(921条1号)。

 

・処分

相続財産に関し、経済的価値のある行為(但し管理行為は除く)は、基本的に「処分」に該当する。果実の処分も同様。法律行為に限られず、事実行為(例えば建物の取り壊し等)も含む。

一般的経済価額のある処分とは言えない(経済的に重要性を欠く)ような形見分けや、葬儀費用を相続財産から出す等信義上やむを得ない場合は除かれる。

例)

生前に代物弁済の予約がされていた不動産につき、相続人が承認・放棄申述前にそれを実行した場合→該当

相続人が被相続人の有していた債権を取立てて、これを収受領得する行為→該当

形見分けとして、交換価値を失う程度に着古した服を使用人に交付→非該当

形見分けとして、相続財産が相当多額であった亡夫の背広、外套を持ち帰り、また時計、椅子の送付を受けて受領→非該当

 

・処分の時期

相続の開始を知ってた後に行われた処分でなければならない。

∵ 知っていれば承認する意思があると推認できる

例)死亡後に建物を取り壊したが、相続の開始自体は知らなかった場合→非該当